@techreport{oai:shiga-u.repo.nii.ac.jp:00002186, author = {久保, 加織}, month = {Jun}, note = {Research Paper, 魚に含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸の生理作用が明らかになり、魚やそれを加工した水産食品が再評価されている。一方、健康で豊かな生活のために食生活指針にも示されているように、栄養や食品の機能性を考慮した食品選択とともに、地域の産物を用い、食文化を大切にしてそれを活かした日本型食生活がすすめられている。地域の産物を用いて古くから作られ、利用されている伝統的加工食品には加工期間が長く、加工中に風味、味、テクスチャーなどが劇的に変化するものが多く、そうして付与された風味、味、テクスチャーはそれぞれの伝統的加工食品の特徴であることも多い。しかし、このような風味、味、テクスチャーは好まれる場合もあるが、逆に嗜好性の低下につながる場合もある。 滋賀県には古くから発達したさば街道筋に当たる地域があり、そこでは現在もさばを中心とした様々な伝統的加工食品が製造され、利用されているが、最近、若い世代を中心とした人々に嗜好面などから受け入れられなくなりつつある。地域に伝わる伝統的さば加工品を伝承し、現代の食生活へ受け入れられるようにするためには、その成分を詳細に検討し、栄養価について評価するとともに、嗜好面における評価も必要である。そして、知何にすれば伝承しえるのかを検討していかなければならない。 本研究では、まず、さば街道筋に伝わるさば加工品の加工工程中の成分変化を詳細に検討した。特に、脂質とミネラルを分析することで、伝統的さば加工品の持つ栄養価について検討するとともに、核酸、遊離アミノ酸やペプチド、揮発性成分の分析と各成分の相互作用を調べることで、嗜好性についても検討した。その結果、さばをなれずしにする加工工程において、さばが本来もっているn3系多価不府飽和脂肪酸を豊富に含む脂肪酸に変化はなく、 脂質面での高い栄養価が明らかとなった。さらに、長期間の加工期間中にさばの骨が徐々に可溶化することで、骨由来のカルシウムや鉄が可食部に移行し、カルシワムや鉄が豊富に含まれるようになることもわかった。一方、なれずしに特有の風味の基と考えられる加工工程中に生成される揮発性物質を特定し、それらが加工の初期の段階で生成されることを明らかにした。 次に、なれずしの嗜好性に関与すると考えられる成分と官能評価によって得られた嗜好データとの間の相関性を調べるとともに、個人の食体験と嗜好性についても検討を重ねた。なれずしの嗜好性には香りが大きく影響しており、香りに関与する物質は加工中に生成される特有の揮発性成分と酸によるところが大きいことが明らかになった。特にこれはなれずしの食経験がほとんどない人で強く現れるものであった。また、なれずしの食経験が少ない人ほど、複数のなれずしの中での嗜好性に一定の傾向がみられ、含まれる揮発性成分にケトンやアルデヒドなどの独特の香りを持つ物質が少なく、芳香臭のあるエステルやアルコールが多いものに対する嗜好性が高いことが明らかになった。伝統的さば加工品の伝承のためには、伝統的さば加工品に対する食経験がない、あるいは少ない人に伝統的さば加工品のもつ栄養や食文化の面からの有用性を訴えるとともに、食経験を与え、嗜好面で馴れを繰り返すことが必要であると考えられる。そして、馴れの段階で与えれらる伝統的さば加工品は、揮発性成分から適切に選ばれるべきであると考えている。一方、さばのぬか漬けである「へしこ」の味と風味に関わると考えられる成分を分析するとともに官能検査を実施し、成分が官能評価にどのように影響を及ぼすかについて検討した。その結果、へしこには生さばより遊離アミノ酸量が多く、味に関与していると考えられた。揮発性成分の分析により、なれずしより発酵臭が少なく比較的生魚に近いにおいを持っていると考えられた。へしこに対する食経験がほとんどないパネルによる官能検査では塩辛さやすっぱさが強くない試料が好まれ、ここでも伝統的さば加工品の伝承のために食経験を与える試みにおいて適する伝統的さば加工品を選択することが重要であると考え られた。さらに、伝統的さば加工品の代表例であるなれずしを加工する工程では大量の飯が用いられるが、この飯のほとんどは最終的には廃棄されている。今回は、この飯の栄養価についても検討し、それを有効に食品として利用することについても検討した。その結果、飯を脱塩し、嗜好性の高い洋菓子として加工することに成功した。, 平成16年度-平成18年度科学研究費補助金基盤研究(C)研究成果報告書, pp. 1-98}, title = {さば街道筋に伝わる伝統的さば加工品の成分と栄養価およびその嗜好性に及ぼす影響}, year = {2007} }